これほどの一体感があっただろうか。まだ、身体の中でくつくつと血液が沸騰している
ようで感動が収まらない。目頭が熱くなり、無理に涙腺をはたらかないようにこらえるとこめかみのあたりが苦しくなる。
「卒業式」
この卒業生が一般に主役と考えられている学校での最大行事に花を添えるものは数多い。会場を一周する紅白幕をはじめとする装飾やそこにいるお世話になった先生方、来賓の方々、保護者の皆さん。そして在校生の子どもたち。
この6年間を振り返り、ステージのひな壇に並んだ総勢50人の卒業生一人ひとりが、自分の思いを呼びかけ形式で披露する。新たな世界と向かって羽ばたく決意の言葉も力強い。しかし、ステージ前列の背丈の小さな女の子が、ついにこらえきれなくなり、涙を流した。
意外な連鎖反応が実は起こった。
一人の涙は、これから学校を受け継いでいく在校生へとつながっていったのである。すすり泣く小さな身体の後輩たちを目のあたりにして、無理にせき止めてい たダムが崩壊するかのように卒業生の誰もがどっと涙を流し始めた。呼応するように、在校生の涙が号泣へとかわって収まる様子がない。この姿に卒業生本人の みならず、会場にいる誰しもが、先生方にかわいがられ手をかけてもらい、充実した活動に豊富に取り組んできた様子がうかがい知れるし、学校のリーダーとし て思いやりを持って下級生に接してきたことがよく分かる。
これまで、本当のかっこよさを示してくれた卒業生に心からの感謝を捧げたい。
「子どもの卒業式」より。