幸田露伴 『努力論』  超訳を三輪裕範氏が手掛ける

 

私の蔵書に三輪裕範氏の『人間力を高める読書案内』がある。その冒頭で紹介されているのが、幸田露伴の『努力論』である。

三輪氏は、『人間力を高める読書案内』の中で、こう述べている。

  露伴は大変な博覧強記に加え、漢学の素養も極めて深いこともあり、ここで紹介した岩波文庫版の『努力論』の文章には、現在では使われないような難解な言葉が数多く出てきます。そのため、現代の文章を読むようにはすらすら読めないかもしれません。

そう言われると、読んでみたくなるのが、私の性分だが、地元の本屋ではすぐ見つかるものでもない。そのときは読んでみたい本の候補ではあったものの、時の経過のため、忘れかけていたというのが正直なところだ。しかし、先日、“努力論”という文字がある書店で目に飛び込んできた。本の題名をよくみると、努力論の前に超訳の文字が添えてある。要するに超訳ニーチェの言葉で話題となり、その後様々な超訳本が多数出版されていたが、この本もその中の1つなのである。しかも、編訳をしているのは、なんと三輪氏ではないか。現代文のようには読めない多くの人向けに、エッセンスを提供してくれたのである。

努力論の中で、露伴が述べている幸福3説は、惜福、分福、植福である。植福は3福の中で露伴が最も良い福としている。この植福は、簡単に言うと、新たな知識でも、発明でも、商品でもなんでもいいから世の中のためになるような「福の創造」を行い、それを丹精こめて世話をしたり改良したりすることによって、「福の増殖」を行うということらしい。

そう考えると、三輪氏の超訳は、この植福なのかもしれない。

 

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